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(10)文芸年鑑の乱歩

 




山中峯太郎作品年表を製作する際に、図書館で「文芸年鑑」をひっくりかえしていた。これは文芸作家協会が昨年一年間に会員の作家がどのような活動をしたかというまとめをしているものであるが、その作家のすべての作品が網羅されているというわけではない。特に雑文はまったくふれられていないのであるから、これだけでよしとするわけにはいかないが、それぞれの作家がどのような雑誌を中心に活躍してたかどうかを確認することもできるので、いちおう押さえておかなくてはいけない。また年度によっては編集者の趣味だろうか、著作権法をえんえんと転載していたり、新たに小説や随筆を書き下ろしてもらっていたりする。その中にいままでふれられることのなかった江戸川乱歩の雑文が二編みつかったので、報告する。

一つは1935年版の「文芸年鑑」である。その520-2ページに、乱歩は「二つの犯罪者文学」という短い随筆をよせている。これは野口男三郎についてかかれている。野口とは1902年の東京麹町で発生した少年臀肉切り取り事件、1905年の薬店店主強盗殺人事件および義兄野口寧斎殺人事件で逮捕された男である。野口は薬店店主強盗殺人事件で死刑となったが、残り二つの事件では証拠不十分で有罪とならなかった。乱歩は、自分は普段は現実の犯罪者の著作は好まないのだが、この野口男三郎のかいた本については興味深く読んだ、ということをこの随筆でかいている。

もうひとつの乱歩の雑文は1950年版の「文芸年鑑」に掲載された「探偵小説について」というもので、昨一年間の探偵小説界の回顧である。普段は水谷準らが書いているのだが、この年だけはなぜか乱歩が執筆している。

ほかにも「文芸年鑑」には甲賀三郎が小説を何作も発表しているのだが、これについてはここで触れるべき話題でもなかろう。