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12)「山彦」

 

最近とんと乱歩のほうは御無沙汰している。それは山中峯太郎の書誌に夢中になっているせいだ。ところが峯太郎をさがして図書館にこもっていると、偶然乱歩もひっかかってくることもある。最近でいえば文芸年鑑の乱歩だろう。其の後手持ちの本を調べてみると、「二つの犯罪者文学」は再録であった。


さて、「明治・大正・昭和前期雑誌記事索引集成」で峯太郎を調べていると、ふとしたことで乱歩の名前が目についた。この「集成」はさまざまな戦前雑誌の復刻をふくんでいるのだが、私がみていたのは「宝塚文芸図書館月報4巻2号、付録」で、それまでに出版された本や雑誌、放送されたラジオ番組、演劇などの情報が掲載されている。その一つにこういうのがあった。


ラジオドラマ「山彦」江戸川乱歩、7/27-9、古川利隆他


乱歩のラジオドラマというのである。しかも題名が「山彦」。いったいなんだろうか?乱歩自身がラジオドラマの脚本を書くとは思えない。では乱歩の小説をだれかシナリオライターが脚色したのだろうか。だが「山彦」という題名である。これから思いつくのは神話の「海彦山彦」くらいなもので、乱歩作品でそれと何か関係があるものはさっぱり思いつかない。まったくの謎である。惜しむらくはこの「宝塚文芸図書館月報」の発行年を控え忘れたことで、それがわかればもう少し手がかりがみつかるかもしれない。ただ国会図書館か都立図書館に行かなくてはいけないので、年内は無理だろう。改めて調べ直して見たいとはおもっている。



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乱歩研究家の中相作さんから「山彦」についてのメールをいただいた。


平山雄一様

 メール拝受しました。ご無沙汰しました。

 お尋ねのラジオドラマ「山彦」は、昭和十三年七月二十七日から
二十九日まで三日間にわたってBK(大阪)で放送されたもので、
『貼雑年譜』に「都新聞」の番組案内がスクラップされています。
「案 江戸川乱歩/脚色 野上徹夫」とされていますが、実際には
名義を貸しただけだと乱歩は記しています。スクラップには梗概も
書かれていますので、『貼雑年譜』(講談社)をご所蔵でないので
したら、またあらためてお知らせいたします。


なんと『貼雑年譜』にのっていたとは…。不明を恥じるばかりである。なお『貼雑年譜』にある粗筋とはこのようなものだ。


北陸線のある湯治場のこほろぎ旅館に、七月二一日から逗留していた「大阪舞台」の女優木谷あい子が夜のうちに姿をかくした。支配人野村の届出で警察から松本警部が出張して調査に着手した。前夜は珍しく一時に四人の客があった。それは大阪に大阪加工株式会社を持つ高橋、劇団「大阪舞台」の演出家森口、田辺という退職官吏とまだ無職の文学青年牧野で、森口だけが木谷あい子に用件があり、他はみな静養のためであった。夕食後ホールで田辺と高橋がラヂオを聞いていると、ホールに近い木谷の部屋で、木谷と森口の押問答が聞えてきた。それは森口の届けた台本について役不足を称えているということはヒステリックな声で二人にも判った。九時四十分の時報前に散歩から帰って来た牧野の顔は、二人が気づくほど蒼白かった。松本があい子の室を調べると三枚あったシーツが一枚失くなっている事と、濡れて泥に汚れているあい子のハイヒールが発見された。前日あい子が大阪へ同時に三通の手紙を出していること、あい子の部屋の窓下から続く靴の跡と、もう一つその部屋一つ隔てた部屋から、あい子の部屋の窓下までの幽かな靴あと、これらが残された手がかりである。


以上が『貼雑年譜』の新聞記事にのっている。キャストでは進藤英太郎や山村総が登場しているのが目に付いた。

芝増上寺山門