15)『明智小五郎対金田一耕助』

 

芦部拓さんの「名探偵博覧会」シリーズの二冊目、『明智小五郎対金田一耕助』を読了しました。その読後感はといえば……「ああ、読んだ、読んだ!!」との一言につきるでしょう。いってみればこれは「ああ、喰った、喰った!!」の読書版の感想といったようなもんでして、満腹満足のときに私が発する言葉であります。

 探偵小説ファンなら必ず夢見るこの組み合せ、しかし生半の伎倆では使いこなせる相手ではありませんし、読者も海千山千の連中がそろっています。それを相手にここまで楽しませてくれるのですから、推して知るべしでしょう。ほんのちょっとした一節に「先月の中旬から下旬にかけて大阪の各紙は、原さくら歌劇団の殺人事件でわきたっていた。これはオペラ「蝶々夫人」の公演のため来阪したプリマドンナがコントラバスのケースから発見される…」というのがあったり、「まあ、これは帆村荘六君ならではの事件だな」というのがあったりして、思わずニヤリとさせられるわけです。

 事件のほうもどんでん返し、またどんでん返しでじつに面白い。うーん、ネタバレが恐ろしくて詳細は明かせませんが、明智のからみかたもじつに明智らしくてよろしいんじゃないでしょうか。

 同じく収録されている「少年は怪人を夢見る」は、××××のモノローグというべきもので(あっ、これはネタバレ?)、黄金仮面との関連性を見事に指摘しています。これも乱歩ファン必読です。