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(4) 明智小五郎の顔

 

今回は少し軟らかめな話題で。

明智小五郎のテレビシリーズが今ケーブルテレビの「ミステリ・チャンネル」で放映されている。かつて「土曜ワイド劇場」でさかんに制作された天知茂主演の「…の女」と題名がそろえられているシリーズである。どうも私は本放送のころから、彼の明智小五郎にはしっくりこなかった。それは感覚的なものだったから、言葉にするのは難しいが、あえて言えば彼の「色気」といったものではなかったかとおもう。彼の独特な眼差しは、「色悪」とでもいっていいような色気と毒気を含んでいた。江戸川乱歩の怪しい愛欲世界なのだからいいではないか、という声もあるだろうが、それはちがう。そのような怪しい世界は明智小五郎の対極に位置するものであり、犯人側にあるべきものなのではないか。その混乱しきった世界に、最後に秩序と解決を与えるべき存在が明智小五郎なのであり、不協和音の後の和音とたとえるべき存在である。だから彼には「色悪」が不必要であり、むしろ明智役は健全すぎるほうがいいのかもしれない。私は天知茂の一番のはまり役は「東海道四谷怪談」の田宮伊右衛門ではないかと思っている。

では「土曜ワイド劇場」で天知茂の後を継いだ北大路欣也はどうか。確かに彼は健全なイメージがある。しかし残念ながら彼には時代劇のイメージがつきすぎているし、原作にあるバタ臭い明智をほうふつとさせるところがまったくない。さらにいえば、賢そうにみえないのである。それは三代目の西郷輝彦、また最近の稲垣吾郎も同様である。もっとも日本の芸能界で賢そうな俳優をさがせ、というのは難しい注文ではあるが。

映画でもなかなかいい明智はいない。白黒時代の藤田進はただのオジさんだし、本木雅弘や真田広之は賢そうでない。(第一本木の「RAMPO」では竹中直人が大ミスキャストである。乱歩役ははげていればいいというものではない。)

むしろいっそ、陣内孝則のように紙芝居に徹するほうが潔くておもしろい。テレビでは戦前に舞台をとった唯一の作品であるし、ほかの番組や映画が乱歩の怪奇性、変態性という部分に焦点をあてて失敗しているのに対して、あえてその部分よりも乱歩の紙芝居的要素を拡大して構成しているという点で新しい試みである。陣内の容貌は原作にもっとも近いし、小林少年と文代をだしているのも好感がもてる。(もっとも賢そうに見えないのは仕方がない)

ただし長髪で育ち過ぎの小林少年はいただけない。唯一のミスキャストである。やはり小林少年はイガグリ坊主でなくては!五年くらい前のえなりかずき、といったところか。あえて明智の理想のキャストを求めると、十年くらい前の片岡孝夫(現仁左衛門)といったところだろうか。